セミナー情報

量研・原子力機構・兵県大合同物性コロキウム(第108回)

The 108th QST-JAEA-UH Joint Condensed Matter Colloquium

日時: 令和元年5月28日(火) 14:00〜15:00
Date and time: 28th May (Tue.) 14:00 〜 15:00
場所: 兵庫県立大学理学部研究棟7階739号室
Place: Lecture room 739 (7F), Faculty of Science, University of Hyogo
題名: X線自由電子レーザーでみる強磁性体FePtの光誘起ダイナミクス
Title: Photo-induced magnetization dynamics of ferromagnetic FePt probed by x-ray free electron laser
講演者: 山本 航平(分子研)
Speaker: Prof. Kohei Yamamoto (IMS)
Abstract:

近年、光誘起スピンダイナミクスがその非自明な過程とスピンの光制御への応用の観点から強い注目を集めている。 光によってスピンの向きを制御する全光学的磁化反転(all-optical switching, AOS)などの現象も新たに発見され、それらのメカニズムの解明やスピントロニクスへの応用などが期待されている。 最近、強磁性体FePtやCo/PtでもAOSが見いだされている。 我々はこれらの強磁性体の元素選択的な磁化ダイナミクス観察のため、放射光X線のエネルギー・偏光可変でパルスである特徴を活用して、元素吸収端での元素選択的な磁気光学効果の時間分解測定をポンプ-プローブ法を用いて行った。

SPring-8で東京大学物性研究所が運営するビームラインBL07LSUにおいて、軟X線の時間分解X線磁気円二色性 (trXMCD)測定装置を立ち上げた[1]。 本装置は光電子からX線吸収スペクトルが得られるセットアップとなっている。 従来の透過法を用いるtrXMCD装置に比べ、軟X線領域で透過しない試料の測定も可能となっている。 軟X線領域に存在するFe L端を活用することにより、Feのみの磁化ダイナミクスの測定に、SPring-8のパルス幅~50psの時間分解能で成功した。

ポンプ光入射直後のダイナミクスはFePtやCo/Ptにおいて1ps以下と期待されるため、よりパルス幅の短いX線自由電子レーザー(XFEL)の活用が不可欠である。 我々はXFELのSACLAにセットアップを構築し実験を行っている。硬X線領域に存在するPt L端でのtrXMCD測定をSACAL BL3において行った[2]。 主にFeのモーメントを反映する可視光での時間分解磁気光学カー効果(trMOKE)測定の結果との比較により、消磁の時間スケールの明確な元素依存性が見られた。 フィッティングからPtとFeの時間スケールはそれぞれ0.6, 0.1 psと決定した。 とくに5d L端利用による磁化ダイナミクスの明確な決定は初めてである。 今回見いだされた時間スケールの違いは他のAOSを示すフェリ磁性体GdFeCoとも共通した特徴と言える。また100 eV以下の領域の光が使えるSACLA BL1において、その直線偏光を利用した共鳴端でのtrMOKEも行っている[3]。 こちらの手法を利用した光誘起磁化ダイナミクス測定の新たな結果についても報告したい。

本研究は東京大学物性研究所・和達研究室で行ったものである。 測定試料は東北大学金属材料研究所・高梨研究室の関剛斎氏に提供していただいた. 時間分解測定実験は,東大物性研の松田 巌氏,高輝度光科学研究センターの久保田雄也氏,片山哲夫氏,鈴木基寛氏,矢橋牧名氏,理化学研究所の玉作賢治氏,兵庫県立大学の田中義人氏,高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の深谷亮氏との共同研究である。

[1] K. Takubo, K. Yamamoto et al., APL 110, 162401 (2017).
[2] K. Yamamoto et al., arXiv:1810.02551.
[3] Sh. Yamamoto, Y. Kubota, K. Yamamoto et al., JJAP 57, 09TD02-1-4 (2018).


世話人: 坂井徹 (兵庫県立大、量研SPring-8)
筒井健二(量研SPring-8)
中野博生(兵庫県立大)
Organizers: Toru Sakai(University of Hyogo, QST SPring-8)
Kenji Tsutsui(QST Pring-8)
Hiroki Nakano(University of Hyogo)