セミナー情報

量研・原子力機構・兵県大合同物性コロキウム(第109回)

The 109th QST-JAEA-UH Joint Condensed Matter Colloquium

日時: 令和元年9月5日(木) 14:00〜15:00
Date and time: 5th Sep. (Thu.) 14:00 〜 15:00
場所: 兵庫県立大学理学部研究棟7階739号室
Place: Lecture room 739 (7F), Faculty of Science, University of Hyogo
題名: 量子ビームを用いた酸素制御に基づく銅酸化物超伝導体の電子状態に対するアニール効果の研究
Title: Study of annealing effects on electronic states in oxygen controlled cuprate superconductors using quantum beam spectroscopy
講演者: 浅野駿(東北大金研)
Speaker: Dr. Shun Asano (IMR, Tohoku University)
Abstract:

近年、銅酸化物超伝導体研究では、カチオン置換を施さないT'構造RE2CuO4(RE = rare earth)における超伝導の発現(ノンドープ超伝導)が見出されたことを発端として、T'構造RE2CuO4における基底状態の見直しと、CuO2面周りのわずかな構造乱れが電子状態に与える影響が注目されている。 T'構造RE2-xCexCuO4での超伝導発現には、還元雰囲気下でのポストアニールが不可欠であり、as-sintered試料で存在する過剰酸素の除去が重要であると考えられている。 最近、適切な還元アニールにより酸素量を制御した薄膜試料や低温合成粉末試料では、T'構造RE2CuO4における超伝導の発現が報告された[1-3]。 これらの結果は、モット絶縁体にキャリアをドープすることで超伝導が発現するという銅酸化物超伝導体の常識を覆す可能性を示しており、超伝導発現に不可欠な還元アニールの役割を電子論的に明らかにすることが重要な課題となっている。

我々は、T'構造Pr2-xCexCuO4+α-δの電子状態に対するアニール効果を明らかにするため、Cu K端透過法X線吸収微細構造(XAFS)実験をSPring-8のBL01B1とBL14B1で行った[4]。 Ce置換、及び、還元アニールによる電子キャリアの増加量nCenANをCe置換量xとアニールによる酸素欠損量δに対して詳細に評価した結果、nCexと等しいと理解できる一方で、nANは2δと一致しないことが明らかとなった。 この結果から、アニールにより高酸素除去した試料では電子とホールの2キャリアが生成される可能性を見出した。 また、この知見に基づいて行ったノンドープ超伝導体に対するXAFS実験の結果も報告する。 また、我々は、上記の物理現象の一般性を検証し、その起源を明らかにするため、CuO5のピラミッド構造を有するT*構造銅酸化物の研究を新たに展開している。 この物質は,高酸素圧アニールによる頂点酸素欠損の修復が超伝導化に不可欠であると報告されている。 従って、T*構造銅酸化物は頂点酸素位置に欠損型の構造変化を与える点でT'構造銅酸化物とは対照的であり、両者の比較研究は、アニールによる局所構造変化と磁性、及び、超伝導の関係に深い知見を与えると期待される。 我々は、T*構造La1-x/2Eu1-x/2SrxCuO4に対する初めてのミュオンスピン緩和(μSR)実験をJ-PARC MLFと理研RALミュオン施設において行い、磁性に対するアニール効果を明らかにしたので、その結果を報告する[5]。

本研究は、東北大学金属材料研究所藤田研究室で行ったものであり、QSTの石井賢司氏、JAEAの松村大樹氏、辻卓也氏、JASRIの伊奈稔哲氏、理研仁科センターの渡邊功雄氏、KEKの幸田章宏、門野良典氏、京都大の北川俊作氏、石田憲二氏、東北大の野地尚氏、小池洋二氏、鈴木謙介氏、谷口貴紀氏、藤田全基氏との共同研究である。

[1] O. Matsumoto et al., Physica C 469, 924 (2009).
[2] S. Asai et al., Physica C 471, 682 (2011).
[3] T. Takamatsu et al., Appl. Phys. Express 5, 073101 (2012).
[4] S. Asano et al., J. Phys. Soc. Jpn. 87, 094710 (2018).
[5] S. Asano et al., J. Phys. Soc. Jpn. 88, 084709 (2019).


世話人: 坂井徹 (兵庫県立大、量研SPring-8)
筒井健二(量研SPring-8)
中野博生(兵庫県立大)
Organizers: Toru Sakai(University of Hyogo, QST SPring-8)
Kenji Tsutsui(QST Pring-8)
Hiroki Nakano(University of Hyogo)